●忸怩たる思いの「じくじ」を漢字では書けまい
帰り道、見知らぬ叔父様に声をかけられた。
「私、東西線の西船橋に帰りたいんだけど、定期を落として・・・」
傘を忘れたため、この突然の雨に水も滴りすぎる程々に良い男になった私を、よりにもよって足止めするとは何事かと怒りを露わにするも、
「この道、真っ直ぐ行けば警察ありますから」
と大人の対応をした私の太ももの筋肉ははち切れんばかりである。
そう、こんな導入で始まって申し訳ないのだが、今日は念願の殺陣がついたのである。
みっちり2時間、気付けば2時間、あっという間の2時間であった。
久しぶりに大汗を掻くのは良いことである。
人は皆、汗を流さねば己の垢を落とせぬのだ。
老廃物を搾り取るが良い!
この1年半、ペ・ヨンジュンに追いつけ追い越せをスローガンに、日々強かに生きてきた私のパーフェクトボディを持ってしても、剣の道は決して安易なものではなかった。
剣を一太刀振る度に、魂がゴリゴリと削れていくのだ。
剣を合わせる度に、涙がジョボジョボと迸るのだ。
もちろん大嘘だが、概ね、その辺を目指す。
あと数日で本番。
あり得ないことが起こるのは世の常。
血湧き肉躍る、そして蛙は雨に歓喜する。
叔父様は西船橋に帰れたのだろうか。
そして僕は、途方に暮れる。