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2007年08月03日

●逢いたくなった時君はここにいない

「きましたね」

「ええ、だって予約しましたから」

「ほ~、そうきましたか。で・・・今日はどうされましたか?」

「どうされたもなにも、歯の治療ですよ。先生歯医者でしょ?」

「そう、先生は歯医者なのであります!」

「宣言しなくても知ってますから」

「そうなんだ」

「いいから、もう。時間ないんですから」

「はいはい、わかりました。やりますよ、やればいいんでしょ」

「小学生みたいな拗ね方やめてください」

「はい、ぜ~んぶ虫歯!」

「わお、短絡的な」

「もういいじゃん、虫歯ってことで。歯医者いきなよ」

「ここでしょ、歯医者。はい、もういいから。今日は歯のクリーニングお願いしますね」

「わかりました。では拝見。・・・ほ~、きったね~な、おい」

「あ?」

「ん?」

「今、きったね~って?」

「ん?いや、来たね、来たね。こりゃきたねって感じで」

「あ、そうですか」

「ええ、なんかドブくさいね」

「は?」

「ん?」

「あの、喋んなくていいですから、さっさとやってください」

「このトークもまた治療なんですよ」

「そうやって時間かけて治療期間延ばそうって魂胆ですか?」

「あっはっは、そんなことするわけないでしょ」

「・・・・・」

「だから解約するのに時間かかるんですよ、あの英会話学校」

「それは本当のことだけど、今はそんなことどうでもいいですから」

「事なかれ主義は駄目ですよ。戦わなきゃ、あんたにはその権利がある」

「あんた言うな、あんたって」

「てぃいいええええええい!(と、頬を叩く)」

「いて!何すんの!」

「気合ですよ、気合。あんた最近腑抜けてるから。この腑抜け共が!腑抜け共、悲しみの愛を見せろ!」

「それ意味わかんないし、あと、叩くなよ、患者だぞ、患者」

「さ、馬鹿なことやってないで、さっさと治療始めますよ」

「無茶苦茶だな」

「あ~、よくもまあ、半年ぽっちでここまで歯を汚してくれたもんですね。毎日磨いてますか?」

「当たり前ですよ、一日二回」

「二回って言ったってね、あなた、回数の問題じゃないんですよ」

「磨き方ってことですか?」

「違います。気持ちの問題ってことです」

「精神論かよ」

「あなたは毎日二回磨いている。そこまではいい。そこまでは。でも、問題なのは、あなたはその二回磨いているという事実に安心してしまっているということです」

「安心も何も、二回も磨けば十分でしょ」

「違います、そういうことじゃないんです。別に回数なんて1回でも10回でも100回でもいいんです。あなたにとっての1回とは、それは、いったい何シュミテクトかってことです」

「は?何それ?」

「ちなみに、私のワイフへの愛は8000シュミテクトです」

「は、はあ」

「キン肉マンマリポーサーは1億パワーです」

「え、何か関係ある?てか、単位変わってるし」

「ちなみに、火事場のクソ力発動時のキン肉マンの超人強度は7000万パワーを超えるといいます」

「関係ないですよね、その話。興味はあるけど」

「磨けばいいさ、磨きたければな。さあ、磨くがいいよ」

「磨きますよ、言われなくても」

「そんししすりゃああ!!!!!!!!!!(と、目を潰す)」

「痛っ!潰した!歯医者が俺の目を!」

「そんな目で俺を見るな~~~!」

「もういいですよ、帰りますよ。もうコリゴリだ」

「待ってよ、帰らないで、やっとエンジンかかってきましたから」

「エンジンかけずに、薬液かけてよ、俺の歯に」

「うまい、うまいな~、お前」

「お前言うな」

「話を戻します。あなはこの半年間、毎日欠かさず二回歯を磨いてきたといいましたね」「まあ、毎日欠かさずってことはないかもしれないけど」

「なのに実際、あなたの歯は汚れている。まっきっきだ。サルだサル。それはウッキッキだ。エリカですだ。それはモンキッキーだ。改名してよかったことって、結婚したことぐらいですよね~、あはは」

「いいじゃない、結婚だって人生においては大切なことなんだから」

「あなたは二回磨いてるから大丈夫だって思った。その安心がいけない。実際に怠った、あなたのその磨かれた歯を確認することを」

「それは・・・」

「違いますか?確かに、表面ぐらいは鏡で確認したのかもしれない。でも、それだけで終わってたんじゃないですか?」

「それはそうかもしれませんけど・・・」

「あなたは安心したんじゃない。慢心したんだ。お、うまいこと言った」

「慢心・・・俺が・・・」

「そうです。あなたが気づかないうちに、汚れは溜まっていたんです。あなたが逢いたくなった時に、君はここにいないんです」

「先生・・俺・・・」

「胸によみがえりますか」

「はい、はっきりと。まるで昨日までの喜びが悲しみにかわるようです」

「忘れなさんな、その気持ち。あんたが犯したその罪を」

「はい、ありがとうございます」

「でも勘違いするな。あんたは確かに汚れていたよ、ドブ臭かったよ。でも、それはあくまで結果の話。汚れたら磨けばいいんだ、何度でも。掃除すればドブも小川に変わるってなもんだ」

「変われるんでしょうか、俺」

「おさるも変われた、コアラも変われた。良くも悪くも、違うか?」

「はい、結婚と離婚」

「キン肉マンなんてどうだ。あんなに駄目超人だったのに」

「はい、いつの間にか王位争奪してました」

「あんたも挑戦しなよ、超人タッグ」

「できるでしょうか?」

「言ったろ、気持ちの問題だって」

「でも、パートナーがいないんです、俺には」

「いるだろ、ここに、お前のパートナーが」

「え?」

「さあ、よく見るんだ、お前のパートナーの顔を!」

「先生!さっき先生に目を潰されたんで何も見えません!」

「ありゃ、目医者いかなきゃ!いそげ~ん!」


[おまけ]

歯関連日記
1999年9月29日「は」
2002年1月5日「wisdom tooth」

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