1999年9月29日「は」

 

歯医者に行きました。
とうとう年貢をおさめました。
だって、痛くて痛くて腹筋して忘れようとしても
忘れられないんですもの、あなたのこと。
腹筋は軽く200回を越したわ。
軽く8つに分かれる勢いだわ。

歯医者に行くと、先生が前に撮ったレントゲン写真を持ってきて

「また痛みましたか?」

と、軽いボケを。

いやいや歯医者殿。
僕は1月に1回きただけで、あとは治療をバックれやがりましたのよ。
ていうか、前に「虫歯」といわれたところ、
結局治療してなかったんですよ。

そんなボケは置いといて、早速治療台に。

自慢するわけではないのだが、
いや、自慢していいかな。

僕はこう見えても歯が強い。
はがゆいほどに歯が強い。
歯医者なんて、そうそう行った記憶がない。
だから、「歯医者が苦手」という意識はない。
でも、やっぱり緊張した。

だってお母さん、先生のそばには
なんともかわいいねーちゃんがいたからなのだ。
アシスタントのねーちゃん、
マスクで顔は隠れていたが、きっとかわいいに違いない。
男のいやらしい妄想は、時に勝手で、時に大胆である。

まさかそのマスクの下が、口裂け女なはずがない。

そんなかわいいねーちゃんの前で、
僕は寝そべり、口をあけるのだ。
う〜ん、恥ずかしい。

そんな僕の羞恥心をよそに、
先生はさっさと治療をはじめた。

僕の歯を見るなり先生が一言。

「あ〜〜〜、かなりきてますね。神経抜かないといけませんね。」

僕は耳を疑った。

「え?<font size&eq;"7" color&eq;"red">真剣に抜かないと</font>」

おいおい先生よ、いやさ、歯科医よ。
真剣もなにも、仕事はまじめにやってくれなきゃ困るぜ。
真剣にって、あんたは人によって態度をかえるのかい?
僕が大阪人だからって、ばかにしてるのかい?

「じゃあ、口をあけてください」

モゴモゴ・・・・・
単なる聞き間違いだった。

何!神経を抜くだと!
どういうことだそりゃあ!
僕は自慢するわけではないが、
いや、自慢していいかな。
歯の強さには自信があったのだ。
それを、ゆうにことかいて

「神経抜く」だと?

先生、歯科医10年目の先生(推定)、
そりゃあ、真剣に神経を抜いてもらわなきゃ
こまるぜ。

でも、神経抜くってどういうこと?
人間の体にとって、神経って大切なんじゃないの?
そんな先生は無神経なの?
神経の数って何本なの?
神経衰弱は弱くなるの?神経は1本減るから。

せめて抜かれゆく神経にお別れの一言でも・・

「キュイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」

わ〜〜!でた、歯医者特有のこの音!
なんとかならんのか、この音!
例えば、この「キュイ〜〜ン」の音を変えてみてはどうだろう?

「ボンヨヨヨヨ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン」

笑ってしまって治療ができないだろうか。
そんなくだらないことを考えているうちに、
治療は第2ステージへと進んだ。

「麻酔をしますね。ちょっとチクっとしますが」

何?痛いのか?
ふん、注射なんてお手のもの!
なんてったって、今回の公演で注射を何本打ったかわからないぐらい
うったもんね!いわば、注射のプロだ。

「ギュ〜〜〜〜〜〜」

いてててててて!!!!!
先生、痛いぞ!ちくっと痛いとかいってるけど、
くちびるを思いきりつまむな!そっちのが痛い!

「2時間ぐらい効きますから。ま、人によっては効きにくい人もいますがね。あはは」

何がおかしいねん!とかいって、僕も愛想笑いしたけど・・・

「痛くなったら手をあげてくださいね。」

手をあげてって言っても・・・手をあげたらやめるんかい!

「じゃあ、いきますね」

あ、そんな、いきなり!
先生、いくときはいくって言って!あ、いったか!いや、そんな!
きた!おう!おう!おう!あ!全然痛くない!
すげ〜〜〜〜〜麻酔すげ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

<font size&eq;"7" color&eq;"blue">麻酔最高</font>

「心が痛い時の麻酔ってありますか?」

そんな、粋なことを言いたかったけど、
あいにく口がふさがってて、というか、開いたままなので言えませんでした。
治療が終わってから言うかどうか悩みました。

「君の心の痛みをとる、麻酔になりたい」

そんな、フランス人みたいなことも思いつきました。
フランス語ではなんて言うのかな、そんなことも考えました。

治療されてる時、目をつぶるべきかどうかも考えました。

そういえば、キスの時は目をつぶるのだろうか。
これも疑問だ。
みんなはどうなんだろう。
そしてまた、先生はどうなんだろう。

目をあけていれば、先生と目があってちょっぴり恥ずかしいし。
先生は動揺して、間違って「舌」とかけずられたりしたら・・・・

それはだめだ!それだけはさけなきゃいけない!
じゃあ、かわいいねーちゃんを見つめればいいのかな?
う〜ん。それも恥ずかしい。
間違って

「君の瞳に吸い込まれそうだよ」

とか言っちゃいそうだ。
でも吸い込まれるのは僕の唾液だ。
先生がシューシュー吸っている。

あの吸われた僕の唾液は、いったいどこへいくのだろうか?
瓶につめて、売られたりはしないだろうか?
だめだ。
どんどん心配になってきた。

「先生、僕の唾液はどこへ行くの?」

「それはね、大きな海に行くのだよ」

そんなことを聞いてみたい衝動にかられたが、
あと一歩のところで我慢した。
あとで確認することにする。

先生が鏡で虫歯の個所を見せてくれた。

「この歯の中の赤い個所が神経ですよ」

え?神経って赤いの?
ていうか、神経を抜くって、どうやって?
やっぱり、「さつまいも」みたいに、
土の中からずるずるって引っこ抜くように
抜くのかしら?
間違って、顔中の神経とか抜けないかしら?
まさに芋づる式!
ずるずるって抜けて、顔中の神経がなくなって、

「あんたって本当に無神経ね」

とか、言われるのでしょうか?
で、

「いやいや、本当に神経ないねん」

とか言って、軽い笑いを誘うのでしょうか?
いやだ!そんな人生いやだ!
無神経なやつはもっといやだ!
くそ〜〜、出て来い!

「じゃあ、もうちょっと我慢してくださいね」

非情な先生の声が、僕の意識に流れこむ。
きっと先生は心の中で

「こいつの神経全部抜いちゃお〜〜〜っと。」

とか思ってるに違いない!
くそ〜〜誰か、誰か助けてくれ!
アシスタントのねーちゃん、助けてくれ!
いや、待てよ!
ひょっとして、このねーちゃんもすでに先生に神経を抜かれてるんじゃないか?
だから、僕がこんな目にあっていても、
顔色ひとつかえずにいるんじゃないか?

そうだ、そうに違いない!

このねーちゃんを助けるんだ!

だめだ〜〜〜〜〜体が動かない!
さっきの麻酔だ!麻酔に違いない!
体の自由がきかない!

これじゃあまるで、ショッカーに改造人間の手術をうけた
仮面ライダーと同じじゃないか!
いや待てよ、ひょっとして、仮面ライダーもまた

「歯医者に行こ〜っと」

って、気軽にでかけた挙句、改造人間の手術を受けたんじゃないか?
かわいそうに・・・・かわいそうにライダー・・・

しかし、考えようによっては、俺は強くなれるんじゃないか?
仮面ライダーのように、正義の為に戦える体をもてるんじゃないか?
もし仮面ライダーになった場合、俺は何号だ?
仮面ライダーアマゾンのことを

「アマゾンにーさん」

て呼んでいいのか?
アマゾンが変身する時、歯に「あおのり」がはさまっていたのはご存知か?

しかしまた考えた。
改造人間として、キャラメルボックスにいてもいいのか?
公演中にショッカーに襲わたりでもしたら・・・・
罪もないキャラメルのお客さんを危険な目にあわすかもしれない・・・
そもそも、本番中には変身できない・・・

どうすればいい、どうすればいいんだ!

そして、俺が仮面ライダーだということがばれでもしたら、
「キャラメルボックス速報ページ」に

「快挙!細見は仮面ライダーだった」

とか、さっそくTOPページに更新されるのだろうか?
プレスとかでも

「改造人間細見大輔を追え!」

とか、特集を組まれるのだろか?
「徹子の部屋」に出たらどうだろう?
徹子に

「あなた、改造人間なんだってね〜。ま〜、大変ね〜」

と、あいかわらず心ないコメントをいただくのだろうか?
だめだ。やっぱりだめだ!!
俺はここで改造されるわけにはいかない!

なんとかせねば!
なんとかこの状況から脱出せねば!

「はい、細見さん。治療は終わりました。次回の日時を決めてくださいね」


僕の虫歯は、まだ始まったばかりだ

歯医者よりも、精神科に行った方がいいのか?


 

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